■ 馬に蹴られろ! 3 ・・・ CASE 3 秀 。
残りもあと10日。
以前から話に出ていた温泉――車で1時間の秘湯――に、行くことになった。
ナスティが皆の疲れを労うって事だけど、たぶんに彼女も疲れてるんだろう。
日帰りはイヤだって、強固に主張したから。
そこで、俺は予約する際に提案した。
「何かあった時のために残っていんだから、2組に分かれて別行動の方がいいだろう」
もちろん、99%は下心。
運転できる征士と居残り&温泉。
もう、残り少ないので、いちゃいちゃさせて下さい。
っていうか、正直、まだシてないんだよ。
征士からは、OK出てんのに…。
「え〜、俺行く気満々なのによぉ〜」と楽しみにしていた秀から、後になるのがイヤだと声があがる。先走りが定番の遼も、同意していた。
「念のため、当麻の言う様にした方がよいか…」と思案していた征士からは、後押しの発言。
伸も頷いている。
俺の提案(作戦)に、伸か征士が同意すると、受け入れられる事が多かったのは、あの闘いの最中から。
しぶしぶの秀・遼を見ながらも。
――― だろう?征士。お前も二人っきりになりたいよな・・・。
ニヤケそうになるのを、必死で普段顔に留める。
「伸と当麻と3人で、後の組になれば良いのではないか?遼も秀も行く気満々だろう?」
え?伸?って顔をすると。
「3対3は妥当だろう」
と真面目な征士君はいいました・・・。
ほんっっとに、空気読めない奴だな!
そんでもって、俺との事は何にも考えてない訳だ!
ひでぇ!!!
そんな、俺の気持ちが現れたのか。
先組の出発の当日は、天候がお世辞にも良いとはいえなかった。
昼過ぎ、かなり強風と雨がパラつく中、「予約したから…」とナスティが車に荷物を載せている。
それを、征士と共に手伝っていると、伸に呼ばれた。
「当麻、僕も先発組でいくね」
こっそりと耳打ちされる。
ありがたい申し出を、悪魔のような頬笑みで。
「貸しにしとくから」
お前のせいで我慢してたってのに・・・。
でも、まぁ、本当に願ったりも叶ったりなので。
(後が怖いが)眼先の欲に、正直になることにする。
「さんきゅー」
秀は実家に寄ってから合流するとかで朝からいなかったから、ナスティの車に、遼と伸が乗り込む。
その姿を見た征士が声をかけた。
「伸?」
「お子ちゃま二人とナスティだと、彼女も大変そうだから」
「相変わらず、優しいな」
――― 俺に恩を売り、征士からの評価まであげる毛利伸。流石…。
油断できないヤツと思いながら見送りが終わると、征士はさっさと台所に入っていった。
「伸がいないとなると、食事が…」
「食材は…」とチェックをはじめていた。
確かに食材はあるが、俺も征士も上手ではない。っていうか、料理をした事はない。
「夕食は…まぁ簡単な物なら作れるが。麺類か…うどんかラーメン…」
――― やったー!やっと二人きりだ!ホントにさぁ。
嬉しさ爆発中の俺とは、対照的に本気で悩んでる…。
そんな事よりも、大事な事あるだろ、大事な事!
なので、背後から抱きつく。
「どっちがいいのだ?」
「征士がいいなぁ」
ちゅぅとうなじに口づける。
びくっと、背中が震えたのが伝わる。
「・・・がっつくな」
「玄関は閉めといたから」
後ろから囁くように、耳にも口づけると「・・・おい」と少し弱い口調で抗議が上がる。
弱いんだよね。ここ。
「もう、十分待ったし。いいだろ?」
「…わかった…。部屋に戻ろう」
「歩きにくい」と言われながらも、後ろにひっついたまま階段を上がった。
もうね、離れたくないの。
くっついてるだけで、幸せなの。
でも、部屋に入ると、引っ剥がされた。
「で、お前はどっちがいのだ」
ベッドに腰掛けながら、聞いてくる。
その横に座りながら――以前はこの位置から、触れられなかったんだよなぁと思い出す。
今は、いいんだよなぁ。
肩から抱きしめて。
「んなもん、どっちでもいいよ」
とりあえずっ、征士をいただきます。
夕食取らないぐらい、ずっとシテタいんだけど。
「意外だな」
「なんで?」
やや、考えている風の征士。「実はどちらも想像できていないのだが…」とか言って。
お前がそんなに飯にこだわるとは、知らなかった。
「お前がスル方がいいのだと思っていた。では私が」
と、押し倒された。
「飯の話じゃなくて?」
「この状態で、食事の話題ではないだろう」
空気読めないヤツに言われた。
「勘違い。それだったら、スル方がいい」
ベッドに押し倒し返して、顔にかかった金の髪をかきあげる。
両方の紫の瞳が現れて、「あぁ、すっげぇ好きだな」と思いながら、唇を寄せる。
と、自然と目を閉じた征士の瞼に、キスした。
唇に触れている長い睫毛が、微かに震えている。
「想像つかないんだ」
そのまま、頬に鼻先に、唇へと移動させる。
「あぁ」
「じゃぁ、任せといて」
一層、外の風雨は激しくなっていて、嵐と言ってもいいぐらい。
轟々と唸る様な音が、外界を遮断して完璧な個室を演出してくれる。
―――きっと、征士が泣き叫んでも、外には聞こえない…。
力で押さえつけてってのに、興奮するのは男のサガ…。
俺なんて、ちらっと、想像しただけで、下肢が熱くなってくる。
―――いやいや、泣くより、啼くだな。気持ち良くなってもらわなきゃ、な。
無理矢理シても意味がない。
初めてだろうから、痛がるかもしれないけど。
でも、一回キリってのは、考えられないから、もっとシたくなるように、良くなってもらわないと。
だから、ゆっくりと口づけを与えあう。
慣れてきたからか、征士も少し応えてくれるようになった。
キスしやすいように、首を傾げてくれる。
それだけで、なんか、嬉しくなったり。
―――せーじ、大好き…。
お互いの唇の感覚を、楽しむように。
そして、綺麗な唇の輪郭を優しく舌でなぞっていく。
何度か繰り返すと「ん」っと吐息が漏れて、薄く口を開くと征士も舌を出してくる。
先端だけを、ちゅちゅっと吸いながら、ぺろりと重ね合わせる。
ねっとりとした感触が、より卑猥だ。
それから、深く貪るように、口内を蹂躙する。
「…ん…ん…」
歯の周りをなぞると声があがるのも事も覚えた。
シーツを掴む手に力が入り、「イイ」って教えてくれる。
キスばっかりで、進めなかったけど、怪我の功名だよな。
もっと、もっと色々感じて欲しい。し、感じさせたい。
征士の白く美しい手をとると、指を口元に近付ける。
唇と指とを、交互にキスしながら、「目を閉じて、想像して」と囁く。
それから、中指に舌を這わせた。
先端をぺろりと舐めてから、唇で何度も食む。
「・・・あ・・・」
何を意味してるのか、すぐにわかったようで。
ぎゅっと閉じられた目の周りが、さっと紅くなった。
反応が嬉しくて、指の根元までを口に含む。
そのまま、指の腹に下から上へと舌を滑らせて。
―――もう少ししたら、本物にも、こうするから。
その部分を布越しに触れると、少し固くなってきていた。
「気持ちいい?」
言葉は出なかったけど、首が縦に揺れた。
こんな時も、正直って…かわいい。
「せーじ、かわいい。大好き」
首筋に口づけながら、空いている方の手で、服の上から、胸のあたりを擦る。
何往復かすると、突起が立ちあがってきて、場所を教えてくれた。
そのまま、軽く摘んでみる。
「あぁ」
短い嬌声。
俺をみつめる瞳は、潤んできていて。
みつめ返す俺の眼は、欲情に光っているに違いない。
目を逸らせない、一瞬。
欲しい。
触れたい。
愛してる。
俺の事も、欲しい?
触れて欲しい?
愛してくれる?
口づけて、想いを伝える。
「せーじ…」
「と…う…ま…」
自然と名を呼び合って。
もう一度、その眼の奥の真実を見たいと願う…。
と。
ガシャーン!!!
突然、窓ガラスが割れた。
いや、嵐とはいえ窓を割るほどではない。
―――割られたのだ!
瞬時に、身体を起こす。
俺は投げられた石の軌跡から、征士はたぶん気配で、玄関付近と予測し、すぐさま一階へ駆け出した。
――― あ・・・。
「なぜ開けんのだ、秀であろう」
後からきた征士が声をかけた。
自分も玄関に近づいた時点で、義の戦士の気配と気づいた。
――― 開けたくねぇ・・・。
どんな理由であれ、帰ってきたなら。
開けたなら。
貴重な、伸に貸しを作ってまで手に入れた貴重な時間が、時間があぁぁぁ…。
俺を押しのけて、征士が玄関のカギを開けた。
そこには、案の定、ずぶ濡れの秀が立っていた。
「わりぃわりぃ、軽くぶつけるつもりだったんだけど、風が強くてさ、まさか割れちまうとは・・・。
ってお前ら…鍵閉めて、昼間っからなにやってんの」
秀の視線は乱れた征士の襟元から覗く、赤い印を見て呟いた。
秀曰く「嵐で電車が止まっちまって、温泉行けなくてよぉ。ここまでは動いてたから、帰って来た」んだそうだ…。
それが、それが分かっていれば、天空の俺は、何とかできただろう(?)にさぁ…。
――― ち、ちくしょう…。
しかも、夜は夜で、秀が手土産にしていた日本酒を征士が見つけ、酒盛りになった。
デキなくて、悶死しそう。
あと、5日。
俺、できるんか?
いや、スル!絶対スル!!!
諦めの悪いのは、性分だからな。
嵐に向かって、宣言してやった。
はい。全員にバレて、公認になりました!(笑)
2011.10.17 UP
by kazemiya kaori