■ 青すぎる春3 ・・・動きはじめた 青過ぎる春
眠っていると、突然、私の身体の上に気配を感じた。
敵か?!殺される!
声を出さず、その相手を蹴り上げ、飛び起きる。
右手に光輪の剣を呼び出した。
薄暗い闇の中、切りかかろうとした時
「せーじ、俺!おれ!」
うずくまった影から出されたあわてた声は、聞きおぼえがあった。
「当麻?…4人で闘う破目になるではないか。声をかけろ。危ないぞ」
「え?声掛けたら、シてもいいの?」
危ないのは、私の方だったのか…。
「…やはり、4人で闘うか」
と睨みつけると、「すみませ〜ん」と悪びれる風もなく返事がかえってきた。
そんな当麻を、複雑な思いでみつめる。
当麻は、私の事が好きらしい。
なんとなくではあるが、感じていた。
不思議とヤツとは、言外のコミュニケーションがとれる…ような気がする。
最初は、キツイ事を平気で言うイヤな奴であったが、それが彼の役割だと知れば、感心するしかなかった。
作戦に関して、誰にどのように責められようと、受け止め、説得し…自分の役割を演じている。
そして色々な事を言われた日は、深く深く思考の中に入り込み、作戦を練り直しているようであった。
私などは戦場から柳生邸に戻ればそれなりの休息をとれるが、当麻は戦場以外でも智将として働いていた。
厳しい役目だ。
それを、淡々と実行する男を、好ましいと感じていたのだ。
だから、私が当麻をどう思っているかと言うと気に入っている。すごく。
そして、初めてで何時からかも良く分からないが、たぶんそういう意味で'好き'なのだ。
―――でも、アイツはそれに気づいてない。
私は当麻の想いに気づき、当麻は私の気持ちを感じ取れない ―――その違いは、私の方がキャパシティが狭いという事だろう。
恋だと気づいても、それに夢中になれない…勝つ事が生き残る事、守る事が自分の中で大きくて。
だから好きだと自覚がしても、のめり込むほど集中できず、客観的(他人事みたいだ)なので当麻の想いに気づいた。
逆に、全てを見渡し、全てを理解する当麻は、その許容範囲が広すぎるがために、自分の想いと欲望に振り回されている。
その視野の広さを、私は心配する。
範囲があまりに広く、そして私を含めた4人の鎧戦士の猪突猛進ぶりを知っているから、ヤツは何かあったら…自分を犠牲にしても勝とうとするだろう。
もしくは、それでも勝てればよいと考えているようなのだ。
それだけは、選択させたくない。
願わくば、この環境下ではなく、当麻との関係を作っていきたいのだ。
「…当麻。そこから、動くなよ」
私は剣の切っ先を向けて、動かないように念を押した。
「剣呑だなぁ」
「寝込みを襲われたら、今後の闘いに響く。だから、言っておく」
「…」
珍しく神妙な当麻。まぁ、半分以上は剣の効果だろうが。
「私も、当麻の事をイイと思っているぞ」
淡泊な告白…。
2011.09.06 UP
by kazemiya kaori