■ Treasure Box 2
・・・ トレジャー ボックス
あんなに冷たい紫眼を、久しぶりに見た。
悪いのは自分だと解っている。
でも、あんな言い方をされたら、謝る気持ちになれない――。
出張の予定を告げたら、征士の顔色が変わった。
「何故、今まで言わなかったのだ!」
きつく、責められるような口調。
「何時のタイミングで言ったって、予定は変えられないから」
「そういう問題ではない」
「じゃあ、どういう問題だよ」
「もっと早く教えてくれてもいいだろう。私には関係ない事なのか」
「だから、今言ってんだろ」
「仕事だからで、全て許されるか」
「許すってどういう意味だよ。決まった事にぐじぐじと。女みたいな事言うな」
売り言葉に買い言葉とは、正にこの事。
一瞬殴られるかと思った。
実際、手は出なかったけど、それより鋭い視線を残して、出て行った。
出張が決まったのは、1カ月前だった。
ただ、それをきいた時、またまた携帯電話は電池切れだった。
―――後で、メールしよう。
何が不思議って。
その一瞬を逃すと、「後で」の「後」はタイミングが凄く取り辛いってことだ。
充電が終わるころには、作業が佳境に入っていて、そんな余裕がなくなった。
つまり、頭からすっかり飛んていた。
その日以降、ふとした瞬間に「あ、連絡しないと」と思いながらも。
顔見て言った方がいいかな?とか、ひと段落してからとか…。
自分の中で、勝手に決めて、連絡しなかった。
家で、言えれば良かったんだけど―――なぜか、思い出すのは、仕事場で。
少しぐらい伝えるのが遅くても、いいだろう。と甘えてしまっていたのが、事実で原因だった。
そうこうしていると、「あ、言っとかないと」って事自体が薄れてきて。
とうとう、今日になった。
かなりまずい、とは思っていたけど、あんな態度に出られるとは。
かなりまずい、と解っていたから、虚勢で対抗したらこんな事に。
仕方ないヤツだぐらいで済むと思っていたのに、予想よりもキツイ態度が返ってきて、ムカついた。
素直に頭を下げる気には、どうしてもなれない。
それぐらいで、ウジウジ言うな!って本気で逆切れした。
なので。
征士の主張で、ベッドは寝室にしかないから。
これ以上、険悪になりたくないから、ソファで休む事にした。
連絡ミス。ちょっとで大事!よくあることでーす!。
2011.10.06 UP
by kazemiya kaori