■ 馬に蹴られろ! 5
・・・ おまけ 4の前日。 CASE 5 征士 。


後、一緒にいられるのは、4日程。

とは言え。

何で、あんなにも、色々と。
急いで。
求めて来るのであろうか…。

外に連れ出されたり、部屋で押し倒されたり。



それとも。
私が―奥手なのだろうか…。

確かに、そうかもしれない。



今だって。
寝入った事を確認してからでなくては、手を伸ばすことさえ、躊躇われる。

早々と床に入って寝息を立てている人物のベッドに、腰を掛けた。
 
やっと昇ってきた月が、濃青の髪を照らす。
その艶やかさを確かめるように、指ですく様に撫でる。



闘いの最中、眠れないという彼を、幾度かこのように触れながらに過ごした時もあった。

その頃から、特別だったのだろうか?

一身に責任の重圧を受け、前に進もうとする男。
己とは違う強さを保つ――羽柴当麻。

不思議と分かりあえるような相手。
傍らにいるのが、心地よいと感じる存在。



その彼が、シたいと求めて来るのだ。

―――お前の熱を浴びながらに、遠ざけるのは至難であった…。



なのに、終わってみれば、邪魔続きで。

他人事のように、苦笑するしかない。



―――何故に、そんなに急ぐのか


生命の危険の去った今、何も焦らなくても。と思ってしまう。

それ程に、代わる者があり得ない、互いの存在。

言葉にするならば、恋や愛が近いもののだが。

それだけとも、思えない相手。

だから。

焦らなくとも、いいのではないだろうか・・・。

時間をかけて、ゆっくりと。

そう思う分。

・・・もしかしたら、私の方が深く思っているのではないだろうか?




当麻の考えている事は、よく解らない。

共に過ごせるもの、後4日。

何らかしらの、いわゆる"そうゆう事"を求めて来るかと思えば。

昨日も今日も、いやに早く、しかも落ちるように眠ってしまった。




それも、良しとしよう。




私とて、少しは、自ら触れてみたいとも思うのだ。

このような時でなければ、無理であろうから。

もう一度、当麻がぐっすりと、不自然なほどにぐっすりと眠っているのを確かめて。



ゆっくりと身を屈め、唇を合わせる。


与えられてばかりいると思いたくないから。


自分の想いを伝えるために。


幾度も、幾度も。


月が天頂に射しかかるまで。


口づけを繰り返した―――。



  

END


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やや奥手ぐらいの征士さんが好き!

2011.10.19 UP
 by kazemiya kaori