■ 青すぎる春 ・・・動きはじめた 青過ぎる春



俺は、初めて恋をした。

それは、世界を取り戻す戦いの中で、突然の自覚。
綺麗な金髪と紫眼を持つ仲間に。同性の…男の…。
しかも。
自覚した時、初恋くんには、凶悪な「欲情くん」という友人がすでについてきていて、「理性さん」が必死に止めている状況だった。


なのに、なーんも知らない奴は、眼の前で着替えたり、上半身裸でいたり、寝たり…。
いや、同室だから、仕方ないんだけど。
「欲情くん」を止めている「理性さん」の紐は、どんどん細っていく。


そして―――
征士が月明かりをバックに、いつものように『先に寝るぞ』といった時、「欲情くん」を縛っていた「理性さん」の糸は、前触れもなく'ぷつん'と切れた。



「征士、サセて」
寝ようとしていた征士を、そのままベットに押し倒してしまっていた。
俺は「欲情くん」に支配されていて。
「何をだ」
「セックス」
「…」
征士を見下ろしながら、シーツに負けないその白い肌に、唇に、触れたい…。
あぁ、ドキドキする…。いいかな?だめかな?


なのに征士は、顔色も変えず、口に手を当てて考えている。少し赤くなり…。
え?脈あり?
と勘違いしそうになった時、征士は「笑うなよ!」と言った。
………笑う?
一瞬、気のそれた俺の肩をぐいっと押し戻し、座れと横を指差した。


「当麻、その、私はだな…そういう行為は、両想いになってからするものだと思っていて…。
 なんというか、性欲のはけ口に、そうゆう行為はいけないというか、できないというか…」
と正面から眼をみて、力説を始める。
内容に照れているのだろう、たどたどしい語り口で。
「まず、…気持ちがあってこそ、許されるというか…必要になる行為ではないかと思うのだ」


ま、ま、ま、ま、真面目すぎる。
いつもの俺なら、"けっ!正論ぶっこいてんじゃねーよ"と悪態つくんだけど、惚れた相手だからか、赤くなって必死に恋愛論を語る征士って…不器用でかわいいなぁとか思ってしまって。
しかも、空気を読めてない…。
征士の純真・青春パワーに、自分の中の欲情くんパワーが削がれていくのがわかった。


「今が特殊な状況だからと、もし、シてしまったら・・・。
 自分の軸というか、価値観というか良識を…ずらしたら、
 その価値観をはぐくんだ世界をとり戻すために戦っているのに、
 …勝てなくなりそうで、戻らなくなるのでは…と、イヤな気がするのだ」 


…そうですかねぇ?たぶん反論したら、『貴様は〜!』とか言ワレンダロカ?


「外の状況は把握し対応させた方がいいだろうが、自分の中の価値観までかえるのは
 …納得できない。自分の信念を武器に闘うのだからして…そんなことをしたら、勝てないだろう?」



『いやだ』『いいだろ』『よせよ、あっ』
とか、1人で妄想していた俺は、全っ然違う発言―――【私の恋愛論と勝つための精神論】を聞かされて、毒牙が抜けてしまった。


すげぇ〜。
真っ黒い欲情まで昇華する光のパワー。
「だから、しない。では、先に寝るぞ」


何もなかったかのように、自分のベットにもぐりこみ寝息を立て始めていた。
俺はというと、小さくなった「欲情くん」を憐れみながら、隣のベットで大人しく寝るしかなかった。
  


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へたれ当麻ですいません。でも、10代だし。

2011.09.06 UP
 by kazemiya kaori