■ かぼちゃ事変 2 ・・・ 風が吹くと桶屋が儲かる
「当麻…ベッドへ行こう…」
その言葉で、征士が今の自分を正確に把握している事がわかる。
インターホンから、こちらに向かってこようとするの止めるように。
「自分で歩く…触んな…」
今触られたら、腰が砕けて、歩けなくなる…。
それぐらいに、切羽詰まって―― 効いてきている。
分量として、どのぐらいを口にしたのだろう…。
通常の量なんか知らないが、尋常ではない熱さ。
奥から湧きあがる、乾いたような疼き。
――― 早く、なんとか…。
もう、これは征士にどうにかしてもらうしかない。
っていうか、自分で何とかしてもいいけど。
他人の気配を外に感じながら、んな事したくないし。
征士が、放っておく訳ないから。
寝室にいって、熱が治まるまで付き合ってもらうしかない。
ベッドルームに移動しようと、ふらつく足で歩き始める。
なのに、先に声をかけた征士が来る気配がない。
「スんなら…早く来いよ」
「少し待て」
いや、待てない!
と、ダイニングテーブルを振り返る。
「って、…お…まえ…何…喰ってんだよ…」
甘い物が苦手な筈なのに。
テーブルの上にある残りのケーキを黙々と、食べていた。
しかも、滅多にないことに、立ったまま。
いつも1切れでさえ食べきれないと、残りを当麻に渡すのに、2ピースも…。
「…何で?」
「一緒に楽しむのに、食べた方がいいだろう」
そうじゃなくても、絶倫なのに、どーなるんだろ?
身体、壊される…?
とか、想像して。
恐怖よりも、期待にざわっとした感覚が走って、震える。
それほどに。
熱くて、仕方がない。
早く触れて欲しい。
解放されたい。
熱を持った肌が薄赤く染まり、全身で訴える。
来ない征士を睨んでいるのに、眼はとろんと、誘うように潤んでしまっていて。
「征士」
焦れたように、強い口調で呼んでしまう。
慌てて、食べ終わった征士が ――少しその様を楽しむように微笑んで――傍に向かう。
苦しそうに壁にもたれ掛かっている当麻の肩を抱くと。
「あっ」
触っただけで、身を捩ってしまう。
触れられた場所が、火を押しつけられたように熱くなり。
押し出される水のように、全身に広がっていく。
征士がたまらず口づけると、んんっと応えて、もっとねだるように舌を差し出す。
軽く吸い上げると、身体を震わせて縋りついてきて。
腰が抜ける―――。
薬で無理矢理もたらされた、荒れ狂う欲情に動く事さえ出来なくなる。
ただ、身体が覚えている征士からの愛撫が欲しい…。
こんなに辛いのを、なんとかできるのは、コイツだけで。
多分、自分だって、無理だ。
「早く…」
征士のシャツを握る手に、力が入る。
「…わかった…」
動けそうにない当麻を抱き上げて、寝室に連れていった。
もう、ただ事ではなくなってしまっている当麻の様子に、驚きながらも。
無条件に縋って、求められるのは、嬉しくて。
ベッドに横たえると、さっと服を脱がせる。
その最中でさえ、肌を滑る布の感触に、息が上がる。
すでに、高まっている当麻の欲。
――― もう、限界。もう、出したい。
恥ずかしがってもいられないほど、切羽詰まり。
当麻が自分で触ろと手を伸ばす。
と、その手を征士が掴み、シーツに押さえつけ。
昂まりを口に含んだ。
「あああぁぁぁ、んんん………」
望んでいた刺激に、悲鳴のような喘ぎ声が口から出て。
舌でねぶるように絡ませながら、何度か上下させると。
「い…く」と掠れる声とともに腰が緊張して、征士の口の中に精を出した。
ごくりと飲み干し、「楽になったか?」と問えば。
荒い呼吸を繰り返しながらも、呆然と、驚いたように応えられる。
「…まだ……」
中々納まらない熱。
それどころか、ますます、征士を求めているような。
自分だけが知っている、更なる快感を求めて。
もっと、と言葉にするより早く、上にいる男に腕を伸ばした。
――― 淡泊なヤツなのに…すごい効能だな…
他人事のように、そう感心していたのに。
どくん。
一瞬、心臓が跳ねたような気がして。
身体の中心から、どろりとした欲が、急速に溢れてきた。
常に、欲しいと思っている相手なのに。
今すぐ。
強く。
激しく。
奥まで。
全てを手に入れたくて、タマラナイ…。
箍が外れたように、当麻に向かう想いに歯止めがきかない。
「…凄い…な…」
「だろ?」と先輩ぶって言ってみるが、当麻の表情には艶っぽさが漂ったままで。
――― 噛みつきたい
すぐにも襲いかかってしまいそうな自分をなんとか止めて、サイドボードからローションを取り出す。
たぶん、止まれない。止まらない。
だから、最後の理性かもしれない―――当麻を傷つけないために。
ぬるりとした液体を手に取り、既に自身に塗ると「当麻」と合図のように名を呼んで。
躊躇なく、一気に入っていく。
「ンああああああ・・・・・」
ひときわ高い声が上がる。
――― アツイ
待っていたかのように、締め付けられ。
奥に誘う様に、蠢かれて。
夢中で、中を味わって。
ほどなく、絶頂を迎える。
情けない程に、あっという間であった。
射精した瞬間から、少し動きを止めていると。
まだ途中の当麻が、足りないと自ら腰を揺らす。
それを感じただけで。
征士が中で、存在感を取り戻す…。
「ん―――」
先ほどよりは、少しだけ余裕があるのか。
激しいながらにも、もっと感じさせようと。感じようと。
強弱をつけて、角度を変えて。
自らと当麻を翻弄する。
動くたびに、身体の中心から、頭のてっぺんまで突き抜ける快感に。
気持ちいい事を追う以外の意識を削り取られ。
ひたすらに、その電流に似た麻薬のような刺激を追い求める。
熱くて、ぐちゃぐちゃで。
舌を絡めて、肌を重ねるように抱きしめて。
どこからが自分か、お互いわからないぐらいに、深く交わって。
当麻は征士しか、征士は当麻しか、感じることができない。
―――五感のみならず六感までにおいても。
何の言葉もなく。
無我夢中に、互いを貪る様に。
獰猛な視線と、零れ落ちる涙。
荒々しい呼吸音と、甘く切ない様な声。
無意識に、当麻の爪が、縋りついた征士の腕や、強請った肩に傷跡を残し。
無防備な、当麻の首や胸に口づけた時に、甘い噛み痕を残して。
それさえも、煽るための烙印。
厚みのない腰をさらに引き寄せて。
思うままに征士が動けば、応えるように嬌声があがった。
いつまでも、いつまでも。
終わりが見えず…。
白々と夜が明けてくるまで、薬の作用は続いて。
意識も朦朧と、半分疲れて果て眠っている様な。
ただ、離れられなくて。
肌を深く触れ合わせたまま。
完全に睡魔に囚われたのが、何時なのかも分からなかった。
持ち主に似た律儀な目覚まし時計だけが、時刻になると叫び出した。
普段は、音を出す前に止められているせいか、ココが出番とばかりに。
徹夜で当麻に没頭していた征士は、流石に出社する体力は残っておらず。
体調不良で休むと連絡を入れる。
そのまま、ベッドに戻り。
正体なく、くったりと眠っている当麻の横に潜りこみ。
そっと抱きしめて。
これまでの人生で、滅多になかった『二度寝』をする事にした。
それ以降、征士には手作りのお菓子の差し入れがなされる事はなくなった。
END
きっと、征士さんは喜んだと思うんですョww
また、ヤッてるだけの話を・・・orz
2011.11.09 UP
by kazemiya kaori