■ Combat open 6
「当麻、苦しくはないか?」
連れて帰った当麻を抱きかかえたままに寝室に入り、ベッドに横たわらせると。
目を瞑ったままの酔っぱらいが、大きく息を吐き出した。
返事は無いものの、その様子を見ながら征士は起きていると確信して声をかける。
「先程の会話は、聞こえていたのだろう」
酩酊していても、眠っていなければ記憶を残す特殊な頭脳を持っている恋人に。
もう悩まないで済むように、征士は本当の気持ちを告げる。
言葉と共に、その聡明な額にゆっくりとキスを置いて行きながら。
「私は、仙台には帰らない。当麻とずっと一緒に居る」
「お前さ………あの時、祖父さんに念押しされた時、無言だったろう……だから。肯定したと思ったんだ」
閉じられたままの瞼に唇を触れさせながら。
征士が、ここひと月の間に視ていた蒼い瞳は、暗く奥が不安に揺れていた。
今度、その瞳が開かれる時は、明るく澄んだ、いつもの当麻に戻ってほしい。
そして、笑っていて欲しい。これからも、いつまでも、隣で。
心に芯があるとするならば、その想いでのみ出来ているに違いないと征士は自覚している。
だから何時も、自分の方が、当麻をより愛していると思っていた――逃げる彼を追い詰められない程に。
でも。挙動が怪しくなり、痩せてしまった恋人を、痛ましく思いながらも。
――― 原因は、私。私がいなくなるという、思い込み。
それ程に、想われていると実感し。愛情の比重がそんなにも、違わないと分かった事だけは、征士は正直に嬉しく思ったのだ。
その感情が昂り、当麻から唇を離せずに顔のあちらこちらを触れ歩きながら、話を続ける。
そう、後、成すべきは。間違った認識を正してしまえさえすれば、いいのだ。
「あの時は、返事をしなかったのは、まだ社会人になりたてて納得させるのが難しいと思ったからだ。ひよっこの戯言だと、切り捨てられたくなかった。だから、あえて黙っていた。」
嘘の苦手な征士が、唯一取れた行動。
「肯定の意味に取ったのは、祖父の勝手。そして、当麻の勘違いだ」
これで、誤解は解けたであろうと。
話す必要も無くなるかと、唇への口づけに移行しようとすると。
「じゃぁ、誕生日に聞いて欲しい事って、何んだったんだ?」
全ての疑問を解いてしまいたい、理的に納得したい当麻が質問を口にする。
「一緒に闘って欲しいと言いたかったのだ」
「闘うって…?」
まだ、動く唇へのキスは後廻しにして。
耳元から首筋への愛撫に変える。
見える場所には跡を残さないように気づかいながら。
ちゅうと音だけを立て、その行為を主張する。
「30歳までと言われていたのだから、夏に帰った時、実家で話をしてこないといけない。納得してくれればいいが……。もしかしたら祖父が何か仕掛けてくるかもしれない」
その口ぶりは、十中八九の高確率で伊達翁が孫を取り返そうとする事を匂わせていた。
「それでも、当麻の傍を離れるつもりはない。だから迷惑をかけるかもしれない」
「いよ、ンな事は」
「ありがとう」
シャツのボタンに手を掛けて外しながら。鎖骨を舌で舐めて感謝を伝える。
「ぁっ……んじゃ、まぁ……攻められるのを待ってるって……のも……なんだよな……………」
「智将殿には、何か作戦でも?」
「ん…………頭……まわってないから……明日考え……る……」
「そうか」
指がシャツの下で遊び始めるのを、やんわりと包むように止められて。
「後さぁ、ヤルのも明日でいいか?………眠い……………」
結局、眼も開けられないままにいる当麻に苦笑しながら。
「そうしよう。久しぶりに素面の当麻が欲しいからな」
「……………………………………」
それに返事は無く。寝息だけが征士の耳に届いた。
酔いのせいだけではなく、きっと安堵を得て、急速に気が緩んだのだろう。
着替えもせずに眠りに落ちた当麻のスボンだけでもはき替えさせようと。
征士がボタンを緩め脱がすと、腰骨が存在が目に入ってくる。
――― 明日と言っていたから、な
これで我慢しようと。
薄い肉しかついていないそこに、きっちりと紅い痕を残してから。
隠すようにパジャマを穿かせ、自分も着替えてから抱きしめて眠りに就こうとして。
いつものように、位置の良くない場所にある当麻の左手を取り、動かそうとして。
――― 指輪………………………
ふと。そう思った。
指輪を贈ろうと。
これから、共に歩む愛しい人に。
――― どんなデザインが相応しいのだろう。勝手に決めたら、怒るだろうか?
二人の関係を形で顕す事に、深い歓びを噛みしめ。
一層強く当麻と、幸福感と、未来とを抱きしめて。
征士も、ゆっくりと眠りに落ちていった。
やっと終了です!時間かかってすみませんでした。
ずっと自分の中にはあったので、時間おいてるつもりは無かったのですが、一か月以上放置(汗)
まだまだ続く二人ですが、このお話はここまでなのですww
応援下さった方に、とっても感謝です☆
ありがとうございました!
2012.08.11 UP
by kazemiya kaori