■ 青い眼の愛しい人 ・・・ 記憶がなくとも、抱きしめる


目を覚ますと、病院らしきのベッドの上だった。


なぜ?


身を起こすと、くらっとする。頭を抑えると、横から声が聞こえてきた。

「青い目の猫を助けようとして頭打ったんだって。君にはもっと大きくて大事にしているのがいるんだから、怪我してまで助ける必要あるの?」

私に向けて発せられている言葉だとはわかるのだが、ただ誰なのかがわからない。

・・・わからない。

「猫はね、今、秀が動物病院に連れて行ってるよ。ねぇ聞いてるの?征士?」

「すまないが、記憶がない」

目の前の青年は、仕方がないなぁという風に息を吐き出す。

「事故に遭ったのは、会社帰りで7時ぐらい。あぁ、検査も一通り終わってて異常はないって。今晩一晩様子を見て、明日の朝には退院できるよ。今回は短くてよかったねぇ」

今回?最後のは、嫌味か・・・?

「とりあえず、さっき当麻にも連絡ついたし。また、こんな時に限って携帯電池切れかなぁ。2回目だよ2回目!」

私にわかるのは、猫を助けて事故に遭ったという事と、温和そうな雰囲気なのに辛辣な口をきく友人がいるということか。

「征士?」

「私は、征士というのか・・・。本当に、記憶が、過去の記憶がないのだ」

廊下から、ばたばたと足音が聞こえてきた。

「征士!起きてるか?」

そう言いながら、病室のドアを勢いよく開くけたのは、珍しい髪の色:青い髪の青年だった。

その後ろにはがっちりした体格の青年が立っている。


「すごいよ〜。当麻。今回はねぇ、征士、記憶喪失(笑)」

最初からいる人物は、なぜか楽しそうにそう言った。




朝起きると、担当医の診察のあとすぐに退院の準備に入った。

青い髪の青年:当麻が、手続きを済ませてくれている。

昨日分かった事は、同年代の友人が多い事。最初に病室にいた「伸」。そして駆けつけてくれた「秀」「当麻」。その「当麻」と一緒に暮らしている事。

(もう一人「遼」がいるらしいが、今は日本にはいないらしい。)

そして、以前にも似たような事故に遭い、その時は3日間寝っぱなしだった事。



「明日、全部知りたいこと教えるから、とりあえず今日は寝ろ」と当麻が笑うに笑えないという表情で帰って行き、今朝退院のために来てくれたのだ。

身支度をしながら鏡に自分を映すと、金髪・紫眼という日本人離れした顔があった。

私は、外国人だったのか?

ここは、日本で日本語を話しているなどという、基本的な記憶や知識はあるのに・・・。

私は、自分の国籍すら分からないのだ。

何から、当麻に聞けばいいのだろう?



当麻に促されて、病院のタクシー乗り場に向かう。

青い髪の当麻と並んだら、注目の的だな・・・。

なんで、そんな目立つ相手を同居人にしているのかも疑問だ。

もしかして、容姿に難があるものどうし、理解が深かったのか?

  


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なぜ、征士さんは事故を引き起こす・・・。

2011.09.07 UP
 by kazemiya kaori