当麻&征士 Love Valentine 2014



ナふ!

by RIKO様





 
 世間は、恋人たちのイベント、バレンタインデー。





 しかし、当麻の目の前には……………


「おしゃれふんどし………『SHAREFUN』???」

 

 カラフルな文字で『SHAREFUN』と書かれたパッケージと、満足そうな恋人の姿。
 待ちに待ったチョコレートの姿はどこにも無い…。


「ああ。今日はふんどしの日なのだそうだ」

 キラッキラの金髪に紫色の瞳を細め、超!絶!美形の当麻の恋人は、真剣な顔でふんどしの入っているパッケージを当麻に渡す。

「で、これを俺にどうしろ…と?」

 釣りあがった眉をめいっぱい寄せて、当麻は征士を上目遣いに見る。

 生まれてこの方40年。
 ふんどしというものの存在はもちろん知っていたが、実際につけたことは一度もないし、ふんどしの実物も初めて見た当麻は、征士の言わんとしているところを何となく感じながらも、一応聞いてみた。

「もちろん、つけるのだ。夜、寝るときだけでも身体にいいらしい」

「へ……へえ?」

「下着の締め付けというのは、男性器によくない影響を与えることが分かっているのだそうだ。そこで、ふんどしの出番というわけで……」

 突然繰り広げられた演説に、当麻の脳は付いていくのを拒否していた。
 突拍子の無い変わり者の恋人ということはもう25年の付き合いでイヤという程分かっていたが………ふんどし?

「……つまりだな、我々も健康に気をつけなければいけない年になってきているのだ。考えうる最善の方法を選ぼうと思ってこれを買ってみたのだ。それに、今日はふんどしの日ということで大々的に売りに出されていたのだ」

 数分にわたる演説が終わったらしい。


 征士は満足げな表情で、当麻の反応を待っている。
 

「……え?」

 全く話を聞いていなかった当麻は、どうにもとぼけた対応しか出来なかった。
 その間、何故か手は自然に包みを解き、中のふんどしを出している。

「え?」

 征士はその美麗な眉を顰め、当麻の表情を覗き込む。
 まさか、当麻が全く話を聞いてなかったとは思っていないようだ。

「……ああ…。ふんどしが健康にいいらしいことは分かった。で、改めて聞く。………これを俺にどうしろって?」

「もちろん、さきほど言ったとおり、夜だけつけるのだ。本来ならば昼間もつけたほうがいいらしいのだが………それは生活に支障がでそうなので、無理だろう」

 当たり前だろう?と言いたげな表情で笑みを浮かべる変人恋人を目の前に、当麻は頭痛を感じずにはいられなかった。

「これを……つけるのか?」

「ああ。私の分も買ってきた。ほら、見てみろ」

 征士が自慢げに差し出すのは、光輪の鎧の色のストライプ柄のふんどし。
 じつは、当麻の手にあるのは天空の鎧色の同じくストライプ柄のもの。

 何となくお互いの持ち物の色は鎧の色で決まってはいるものの、ふんどしまで……

 こめかみを押さえる当麻に何を勘違いしたのか、征士はハッと表情を改めて当麻の肩を掴んだ。

「当麻…心配するな」

「は?」

「ふんどしの付け方が分からないんだろう?」

「はぁ?」

 眉間に皺を寄せ、目を細める当麻の意図を全く無視して、征士は慈悲に満ちた笑みを浮かべる。

「大丈夫だ。わたしがふんどしの締め方を指南しよう」

「……征士?」

「さあ、当麻。すぼんと下着を脱ぐのだ」

 下半身に伸びてくる征士の大きな手を、当麻は必死で掴んで避ける。

「いやいやいやいやいや!」

「…当麻?」

 当麻の必死な様子に、やっと征士は拒否の意思を感じたのだろう。
 その美麗な眉を顰めて、そっと当麻から離れた。

「征士…」

 やっと分かってくれたか、と、当麻は安堵の息を吐くが、顔を上げた時に見た優しい優しい征士の笑顔に凍りついた。




「当麻、安心するがいい。当麻の一物はとても綺麗だ。…私に比べれば多少サイズは小さいかもしれないが、今さらだろう、恥ずかしがることは無い。さあ、脱ぐのだ」




 


 ああ、こいつとは話が通じない。






 25年たって、やっと分かった当麻だった。





 ナイス、ふんどし!(略して、ナふ)


(終)


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