征士&当麻Secret Valentine 2014
● ――― 指 ――― ●
by 風宮香
しんしんと雪が降り続く。
白く舞い落ちる結晶は、音を封じ込めているだろう。
情緒的に、ではなくて。
結晶は、音つまり波動の伝達を遮るという科学的根拠に基づいている、はず。
そう考えるのは。
少しでも理性を保っていたいから。
所謂、恋人同士のイベントがあった夜は。
当然ベッドの上でも仲良く過ごす事になる。
嫌じゃない。
ただ。
まだ指しか挿入されていないのに。
限界を超えそうだって事実を、理解したくないからだ。
――― 指 ―――
「ちょっと…は…加減しろ………せ……いじ………」
征士の指が、俺の中を動き回ってる。
ただ一つの目的の為に。
口づけと愛撫で脱力してしまった身体の機微を、完全に把握されていて。
腰の奥に指をあてられると――自然と受け入れ、呑み込み始めちまう。
「ぅ」
節のある長い指。
その関節が分かるほどにゆっくりゆっくりと、潜り込んでくる。
指の腹とは違う節の質量を、敏感に感じてしまう己が恨めしい。
征士が反応を察知して、嬉しそうに微笑んでやがる。
指が根元まで入りきってしまうと、内側を優しく撫で始める。
参百六拾度ぐるりを、丹念に探るように。
「っ………ん…………」
それだけで、頭がくらくらする。
さっきまでは。
甘いチョコレートを摘まんで、俺の口に運ぶ役割をしていた指が。
今は、もっと甘い痺れを掻き起こす存在になる。
「っ!!」
息を呑んでるのか、止めた音なのか。
奇妙な音が、下半身の震えを引き出したのを教える。
―――そこは、弱いんだって…………。
征士はその場所を、今度はじわじわと攻め立てる。
遠慮なく。探索の成果を確かめるように、もっと感じさせようと。
――いくら慣れたとはいえ、準備はキチンとしないといけない。
『しつこい』って以前に注文付けたら、平然と答えられた。
征士らしい考えだ。
俺の身体を気遣って、って。
でもな、きっとそれだけじゃないだろ!
自分は、涼しい貌をして。
俺だけが、熱くなっていく。
まだまだ、終わりは見えなくて…。
我慢できない程の欲が燃え上がるまで、続くんだろうか。
欲しがったら、許されるんだろうか。
近年稀に見る大雪でと予報されているせいで、野外の喧騒はなく。
「……っ…ぁ…………」
静まり返った空間で。
自分の喘ぐ吐息だけが、自分の耳に聞こえるなんて。
恥ずかし過ぎるだろ!
「征士………もう…いいって………」
「何が、だ?」と苦笑した時の微細な揺れが粘膜に伝わる。
それだけで、もっと強い刺激が欲しいと下肢がびくつく。
無情な台詞と共に、増やされる指。
内襞をめくるように優しく擦られる刺激が、二箇所になれば。
「ひでぇ……んぁ………っぁぁあ…………」
涙で視界が、ぼやける。
もう、十分だって。
分かってんだろ?
分かってやってんだろ?
階段を上る様な指の動きで、内側をノックされて。
開いてしまうのは、何の扉なんだ。
光って見えるのは、滲んだ視野か、別の空間か。
「……ぁぁ……ぁ………くぅ……」
普段は何気なく見ている指先が。
今はこんなにも凶悪だ。
昼間の征士からは、男の奥を丹念に溶かす為に使うなんて想像出来やしない。
どちらかと言うと、不器用な方だと思うのに。
こんな時だけ。
細やかにしなやかに生動して。
欲情を焚きつけて煽り――神経を狂わせる。
数えられない程に、往き来されて。
だんだんと、考えられなくなってくる。
そして――溺れきった快楽の渦から、解放される事だけを夢見る。
どうにかして欲しいと、脈打つ自身が主張しているのが分かる。
その拍動と同じように、奥が熱く蠢めいているのが分かる。
征士自身を感じたいって、こんなにも訴えいているのが分かる。
「せいじ…………」
名前を呼べば。
通じるだろう?
もう、無理だって。
「なぁ…せ……じ」
舌ったらずかもしれない言葉は。
征士の執拗さのせいだ。
やっと聞き入れられた?
抜かれた指の感覚に。
安堵するのは。
圧迫が消えたからか、これから与えられる感覚を待っているからか。
………もう判断もできない。
散々に慣らされた場所に。
征士が宛がわれ、のめり込んでくる。
「んぁぁあ!」
強烈な存在感と、それを押し分けるようにうねる快感に。
雪のように真っ白な世界へ、意識が飛んでしまった―――。
(終)
何の病だと聞かれると答えにくいのですが、病気なんです。私ww
い、一応、自分の歴史でいうと以前当征バレンタイン企画で『腕』『爪』を書いたので、
今回は征当で『指』を書いちゃったっていう。。。(怒らないで〜)
オチも無くただ書きたくて書いちゃった(いつもの事です)
こんな主催ですから、皆様の素敵作品に支えられているのです!=企画!
お付き合い下さって、本当にありがとうございます!
(風宮香)
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