征士&当麻ecret Valentine 2014



● スイート バレンタイン●
by obachammさま



「おい、何すんだよ?」
「お前に全部任せては去年の二の舞だ。今年はわたしが管理する」
「ひでえ、横暴だ!強引だ!暴君だ!俺が貰ったんだから良いだろう?返せよ!」
「ダメだ」
「って、何処持って行くんだよ、おい!」
「家だ」
大きな紙袋を抱えて征士は出て行ってしまった。
明日のバレンタインは土曜日で会社が休みの為一足早くもらってきたチョコレートの数々。
去年頂いたチョコを三日で消費したのがいけなかった。自分の分と征士の分と。
三度の食事の代わりにチョコをせっせと消費していたら、三日後に征士が来た時に鼻血を出して寝ている当麻が発見されて大騒ぎになった。
せっかくの明日の甘いバレンタインを流血騒ぎで台無しにされてはかなわない。
せっせと時間を作っては恋人の家に通う伊達征士は、念には念を入れて金曜の夜に当麻の家を訪ね、当麻が持って帰ってきたチョコを人質にして帰って行った。
「返してほしければ家に来い」
「ばかやろう、誰がいってやるもんか、お前がそんな暴君だとは思わなかったぞ!来てくださいって言われても行かないからな!!」

ピンポ〜ピポピポピンポ……
「一度押せばわかる!」
昼食を終え食後のお茶を楽しんでいるとけたたましく鳴らされるインターホンにでてみれば、案の定ドアを開けるとぶすっとした顔の当麻が立っていた。
無言のまま中へとずかずか入って勝手知ったるでリビングへと真っ直ぐに入って行く当麻の後姿を見て征士はやれやれとため息をつきながらも、彼にしてはよく来たもんだと感心もするが、それほどに取り上げたチョコが大事なのかと思うとそのチョコに嫉妬さえ芽生える。
リビングのソファーにどっかと座りさあどうだと言わんばかりにふんぞり返る様は、呆れるを通り越してむしろかわいく映ってしまう。
そしてそんな当麻の姿が征士のいたずら心をむくむくと沸き起こる。
「お前にとっては私よりもチョコの方が大事なのか?」
「バカなこと言うなよ、比較するもんじゃないだろ!」
「お前の為を思っての私の行為を…」
「自分の為だろう?いいか、俺にとってこの時期のチョコは特別なんだって何度言えばわかる?あん?」
「そのチョコでかき回される私はどうでもいいというのか?」
「それはお前のかってだろう?一人で嫉妬でもしてりゃいい。どうせ一発やらなけりゃ食べさせないとかいうつもりだろう?」
「あからさまな。それでは面白くないだろう」
「何、面白いって?ど変態な征士さんは一体何を考えてんだ?」
「お前にとって大事なチョコといったな?」
「そうだ。特にこの時期のチョコは総力を掛けてつくられたチョコの中のチョコだからな」
「では、チョコの銘柄を当てられるか?」
「銘柄?」
「そうだ」
「お前が貰って来た中からの出題だ」
「それならいけるかもな、やってみろよ。で、当たったら?」
「私から特別なチョコをやろう」
「当てなきゃくれないっての?」
「そうだ」
「もう買ってるんだろ?ならもったいない…」
「出来ないのか?」
「当ててやる!」

「別に目隠ししなくてもいいだろうに、手のこんだことで…」
「念には念をだ。それに目隠しをしている姿はそそられる」
「ここまでしといてお前からのチョコが半端なかったら承知しないからな!?」
シルクのスカーフで目を覆われてから、口を開けてチョコを待つ。

早く入れろとばかりに舌を突き出して催促する様はとても20だい後半とは思えない。
が、征士はその口へと一粒のチョコを放り込んだ。
「ん…」
じっくり味わう口元を眺める。口の中ではチョコが舌でなめまわされて溶ける様が想像できる。
「ダルシーのトリュフ…このシャンパンの香りと手作りならではの口どけが良い」
「ほう、ならば、これはどうだ?」
「ん〜……ふふ…ブロンデルのアンシエンヌ。この形のトリュフと言えばここだ。お前も甘いな。分かりやすいもんばっかり…」
其れからも次々と当てていく。流石にただ食べているだけではない当麻の味覚の確かさに征士も舌を巻かざるを得なかった。
「さ、もういいだろう?お前からのチョコをくれよ、特別な…」
目隠しを取ろうとして征士がそれを阻んだ。
「まだだ。私からのも判るか?」
「何?まだやんの?仕方ないな、お付き合いしてやるか。さ。どうぞ?」
差し出された舌は今まで口にしてきたチョコのせいでてらてらと艶めいている。征士はゆっくりとその口元を指でなぞる。
ぱくん
当麻が食いつこうとしてきたので指を引いてそれを避ける。
「さっさとくれ!」
じれったそうに当麻が強請る。
ぶんぶんと振り回す舌に笑みを浮かべながら、征士はゆっくりと当麻の顎を掬い、大人しくなったその舌へと自分のそれを合わせた。
互いの舌の間に挟まれた物を舐りながら二人の舌が絡み合う。
熱と唾液と摩擦で溶けはじめるチョコは、あっという間にその姿を変えて消えて行ってしまう。
それでもその名残さえも残すまいと二人の舌は蠢き、唾液の最後の一滴までも吸い尽くそうとする。
やがて、チョコの存在すら一切なかったかのようになって初めて当麻が離れた。
「ふん……チロルチョコ、ずんだ味だな」
「御名答」
「特別?」
「そう、特別だ…」
「じゃあ、おかわり」
気に入ったのかさらに舌を出して催促してきた。
「勘弁してくれ、一個で十分だ。後は口直しだ…」
征士はグラスに入れていた琥珀色の駅を口へと含みこぼさないようにそんな当麻へと口づけた。
合された口からこぼれる液が当麻の顎を伝って細く長い首を濡らす。
豊かな芳香が鼻から漏れ、飲み込まれた強いアルコールが一気に身体を熱くする。
当麻の胃の中では先ほどのチョコとブランデーが混ぜあって身体中をかけめぐる。
「なんか、いい気もち…」
視覚がふさがれている分他の感覚が過敏になるのが解る。
「もっとよくなる……」
「ねえ、もっと……」
「もっと?もういらないと言っても聞かんぞ?」
征士の手は休むことなく当麻の衣服をはぎ取っていく。
「ふふ、チョコだって……」
「終わってからな……体力の回復の為に…」
「じゃ、さっさとやろう……」
当麻が目隠しを取り、征士の服へと手を伸ばす。
「あくまでもチョコ優先か?」
「鼻血出すまで俺を放っておくのが悪いんだ……」
征士の耳にかみつく。
「…それは、悪かった。では、反省を込めて、摂取したチョコの分はきっちりと出さないとな……」
当麻の首筋にきつく痕を付ける。
「そ。だから俺も補給しなきゃ……」
伸ばした手の先には開けられたチョコの箱がいくつもおかれている。
「どちらが先に尽きるか……」
「勝負は目に見えてるけどな……」
ころん、っと一粒のチョコが当麻の口へと消えて行った。



(終)



昼まっぱらから何してんでしょうね。
ベたべたに甘いを目指したつもりでした^_^; (obachamm様)

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