■  Let's become a reindeer togethe    一緒にトナカイになりましょう




帰ってきてから.
征士は、着替えるためにタイピンを外そうと、指を掛ける。
それは昨日、当麻からもらった今年のクリスマスプレゼント。
トナカイをあしらったタイピン。
理由を聞けば、似ているからだと言われた。


Donner(ドナー) 雷
Blitzen(ブリッツェン).稲光
Dasher(ダッシャー) 突進者
Vixen(ヴィクゼン)  口やかましい


唱えるように、次々とあげられた言葉は、トナカイの名前とその意味。
8頭いるサンクロースのトナカイの半分が、征士に当てはまると。

笑いながらに、言われた。

雷、稲光はまだしも。突進者はどちらかと言えば、遼や秀に当てはまるような気もするし。
口やかましいに至っては、誰がそうさせているのかと言いたい。

反論しようにも、そういう蘊蓄・知識は敵わない。
悔しくないと言えば、嘘になる。

だから、どうすればいいか考えて。
一番、お互いが楽しくて、気持ちいい方法を選択したのだ。








「だから…なんで………それが、コレなんだよ」

『それが、コレな』状況とは。


座っている征士が、厚みの少ない当麻の腰に手を添えていて。
ゆっくりと降りてくるように、促している状況。



昨日もシタ―――クリスマスイブだから。
一昨日もシタ―――昼間だったけど、祝日だったから。
一昨昨日もシタ―――冬至で、柚子の入った風呂で遊んでて。



もう、いい加減にしろと言ったけれど。
毎夜・毎回、愛撫され続けた身体は、すっかり敏感に出来上がってしまって。
拒否も抵抗もむなしく、濃厚に、誘う口づけを受けただけで、陥落してしまっていた。


滑らかな肌に、隙間なく付けられている紅い跡。
薄れてきているその印に、真新しく上塗りされる。
その度に「う……あ……っ」と吐息が漏れる。


だんだんと高められていく熱に。
どんどんと追い詰められてながら。


次のステップを知っているばかりに。
先に記憶の快楽だけが、溢れだす。


――― 一番深く密着して、記憶のままの激しい波を、体感したい。


そんな時に。

征士が急に身体を起こして座ったのだ。
口惜しくて、キスするふりをして、唇に噛みつきながらも。
もう、素直に従うことしかできない……。





息を吐きながら、やっと全てを受け入れられたというのに。
更に、自分で動けと言わんばかりに、腰を掴まれ。
その軽い振動にまで、煽られる。


――― もっと、気持ちよくなれる…


恥ずかしがる必要のある相手ではなし。
欲求に正直になって。
待ちきれなくなって、自ら腰を揺らめかす。


どこがイイのかは、自分でもよく分かっているから。
征士の肩に手を置き、支えにして。
思考が乱れ、何にも考えられなくなるほどに、夢中になる。



その様を、喰いいるように見つめていた征士が。
嬉しそうに言葉を発する。



「踊っているように、見えるであろう?」

「…なん……の事……?……あ……ぁぁ……」


きっと、意識がはっきりしている時ならば、気がついたに違いない。
残りのトナカイの名前に関連があると。



Dancer(ダンサー) 踊り手
Prancer(プランサー)踊り跳ねる者


残りの2頭も当麻に似ている。

Comet(コメット) 彗星 ――― 宇宙を走り抜ける才者
そして、Cupid(キューピッド)恋愛の神 ――― 自分の想いを捧げた相手


――― これで、お互いに 『トナカイ』 だな


自分だけで納得する征士。
せめてもの、子どもじみた、仕返し。

もちろん、後で、レインディアカーフ(トナカイのカーフ皮革)のキーケースをプレゼントするつもりだ。



でも。

その前に。


感じすぎて力が抜け、自ら動けなくなってしまったダンサーの舞台に幕を引くべく。

当麻を抱きしめながら、激しく突き上げるようにして。

自らも終演に向かって、走り始めるのだった。



END  


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クリスマスネタ!20代前半ぐらい。若いふたりのいちぃちゃ話。

2011.12.23 UP
 by kazemiya kaori