■ お題SS
『痛がりのくせに。/それは僕の心にゆっくりと沁みて。/願いを叶えてくれた君に。』
特別な頭脳を持つ彼は、痛覚を切り離して傷みを極力感じなくすることも可能だと、先般の闘いが終わる頃に征士は知った。
どんなに負傷しても、軍師である己が先に倒れる訳にはいかないから。
と、笑った当麻を怒鳴りつけ事も覚えている。
傷みは、死なない為の危険信号。無視をすれば、生命を落とす。
諭すように言い募っても、そんなヘマはしないと言い張った想い人。
無事に生き残った、今。
腕の中でその細身の最奥に、初めて征士を受け入れようと。
例の感覚を切断していない当麻が、苦痛に眉間と口元を引き攣らせる。
――― 本当は、痛がりのくせに
「大丈夫か?」
「だい…じょぶな…わけ……ねーだろが…」
それでも。腕を掴んできて、続きを促さんとする。
痛みと共に、何かを得ようとしているのが嬉しい。
痛み以上に、当麻への想いを感じて欲しい。
痛みよりも、強い何かを与えられるようになりたい。
そう征士は思いながらも。
愛おしさが込みあげて、奥に入り込もうとする行為を止める事は出来ない。
願いを叶えてくれた大切な彼の名前を呼びながら。
「当麻」 ―― 愛している
「当麻」 ―― 無茶をさせてすまない
「当麻」 ―― お前が欲しくてたまらない
「当麻」 ―― もっと深く当麻を感じたい
「当麻」 ―― 本当に、愛している…………
その声が、ゆっくりと沁みて。
彼の身体と心を、もっと溶かせてしまえればいいのに、と願うのだ。
END
お題を頂いたので書いてみました^^
しょーじんしまーすww
2012.11.10 UP
by kazemiya kaori