■ 冬月を見て彼の人を思い出す … 冬の空。
「あ…」
わざと、声を出したくなるほど。
月が綺麗だった。冬の空は一段を澄んでいて、その光を際立たせている。
パソコンから顔をあげて、ふと目にした満月から思い出される人物。
――― きっと、アイツがいたら「どうした?」とか訊くんだろうな…
何においても、自分に気をかけていた元同室者、伊達征士。
今は、直線でほぼ600キロメートル程離れている。
そろそろ、規則正しい生活をおくる信条の彼は、眠っている時間だろう。
時折「元気か?」と電話がかかってくるけれど。
口数の少ないヤツなので、近況報告をすると早々と切れる。
以前会った時には。
家の電話では、愛を囁くことはできない。と真面目くさった顔で悩みを吐いていたっけ。
どれほど顔を見ていないかというと。
実は、まだ2カ月しか経っていない。
会いたい…と想うほどに惚れてはいないけど、傍にいたいと思うほどには必要としている存在。
自分の中のカテゴリーでは、特別だけど、恋仲ではないと区分している男。
でも、会いに行くのが多いのは、自分だ。
時間的にも(部活なんかやってないし)、金銭的にも(色々とお小遣いが入ってきたり)余裕があるからなのか。
ふと、仙台に行こうか?と思うと、元来の性(サガ)そのままに、ふらりと行動してしまう。
――― 惚れてるのはアイツの方。でも、必要としちゃうのはオレの方・・・なのかぁ?
どこら辺が、と問われると窮するには。
長所が短所であることを知ってしまっていて。
性格は把握していても、「これです!ここがいいです!」とは、言い切れない。
況してや、似ているから解り合える、なんて事もなくて。
ただ、言葉にはできないけども。
互いに欠けている、凸と凹の部分が。
ぴたりと、寸分の隙も違わずにハマる感覚があるのは確かだ。
――― それが、理由か・・・?
そこまで考えて。
――― 実際、そんな風なこともしちゃってるけど、ね。
突っ込みを入れたりして。
でも、身体の方は、そういった仕様になっていないから。
かなり、苦労した。
最初は、ほぼ押し切られた形だったものの。
『ぶっ殺す』ってほどに、嫌だった訳じゃないし。
少しずつ増していく肉体的な快感以外にも。
何かが与えられ、積み重なっていく、不思議な関係。
「とうま…とうま…とうま…」
繰り返し呼ばれる己の名を耳にする度に。
肉欲と共に深く入り込んでくるのは、目を叛けたくなるほどの真摯な想い。
――- どんな呪詛だよ。
月が沈んで、夜が明けても。
思考は止まらず。
征士も悩んでた時期もあったようだけど、それは一時だったような覚えがある。
――― アイツは、決めたらブレナイっていうか。悩まないタイプなんだろうな
だからって、訳じゃないけど。
――― 俺が二人分以上に、悩む訳だ。
なんでなんだか。あやふや、あいまい、が多い関係。
事、問題ともなれば、ハッキリさせたくなるのが常だけれど。
征士と、その関連事項は、明確にはさせたくない…気がする。
色々考えてみたりも、悩んでみたりもして。
答が何だったら納得するのかが、分からないからか。
分かるのが怖いのか。
先を見ようともしない自分に…。
建設的ではなく、無駄な作業な様な気もして。
煮詰まると。
――― うわぁぁあぁぁぁぁ
と、心で叫びながら。
気がつくと、仙台への飛行機に乗り込んでいたりして。
そんな、悩みをよそに。
きっと、自分の顔を見たら、ひどく嬉しそうに微笑するであろう男を想像して。
――― アホらしい
ゆうべよく眠れなかった当麻は、機内で着席すると同時に眠りに落ちた。
END
昨日も満月綺麗でしたね〜vv
遠距離恋愛高校生話。
秋の空に君を想う と対なんですが。はいはいはいはいって感じの二人で(笑
2012.1.10 UP
by kazemiya kaori