■ あざ
学校が休みになると、決まって僕たちはここ柳生邸にやってきて時間を過ごす。
まさしくの『戦友』である仲間と過ごす時は、気を遣わずに素で過ごせる貴重な時間だ。
ましてや個性的な仲間達、楽しくないはずがない。
当麻も征士も受験があって冬休みは来られなかったけれど、無事に合格した二人は大手を振ってやってきた。
この春休みは五人全員揃った事になる。
だから盛り上がって。
昨日も遅くまで飲んでいたから、まだ誰も起きてこないけれど。
朝食の用意はしておかないといけないなぁと、僕は一人キッチンで準備を始めている。
すると。やっと。
階段を降りてくる音が聞こえて、早起きに類する征士が顔を出した。
「伸、おはよう」
「おはよう、征士。……どうしたんだい?」
あまり表情を変えない彼が、朝からあからさまに暗いのは珍しい。
確かに飲んだけれど、彼があの程度で二日酔いになるはずはないのだから。
――― 昨夜、何かあったのかな?
主に、当麻、と、ね。
だったら、聞きたくないなぁ……。
自分で理由を聞いといて、「しまった」と思った。だけど、遅いよね。
征士と当麻。
この二人が付き合っているのを、少し前から知っている。
当麻に言わせると、ちょっと違うらしいけど。
傍から見ても分かる程に想い合っていて、肉体的にもそうゆう関係もあるのに―――僕からしたら、「ナニ寝言を言ってんだろ?!」って感じだよ。
そんな感じの疲れる事この上ない二人には、あまり関わりたくないと言うか…。
「心配なのだ、伸」
――― やっぱり、理由を話してくれるんだ……ね……
「何が心配なんだい?」
僕は自分を大人だと思うよ。聞いてあげるよ。
その代わりじゃないけど、目で征士を促して朝食の準備を手伝わせる。
もう準備ができているサラダとパンをテーブルに運んでもらって。
自分はスープに火を入れて温め直す。
そろそろ他のメンバーが起きてきてもいい時間だからね。
「当麻が、あまりにもそそっかしいというか……」
「いつものことじゃないかい?夢中になったら、他の事への注意が向かなくなるのは」
「だが、痣か幾つもあるのだ。
しかもどうやったらぶつけられるのか、と言う場所にもだぞ。
何時、何処でと訊ねても答えられない。かなり大きな痛そうな痣なのに。
それに気付かない程に別の事に気を取られているなんて……」
心の底から心配している征士の顔は、極真面目で。
眉間に皺をよせ、食いしばる様に口元に不自然に力が入っているのが判る。
内容を知らなかったら、きっと親兄弟が瀕死なのではないかと思えるほどだ。
「伸、信じられるか?内腿の付け根にもあったのだぞ。大学生にもなるというのに」
―――それって、君が自分で付けたんじゃないのかい?
っていう台詞は呑み込んでおくよ。
だいたい、そんな場所を見せたり見たりする関係だって、堂々と聞かさせる僕の立場は?
判ってくれない征士も、大学生になるんでしょ!
「まぁ、4月から東京で、しかも近所で暮らすんだから。
征士が様子を見てあげれば、大丈夫なんじゃない?」
「そうだろうか?」
「うん。多分当麻は言っても治らないと思うから。
征士が傍でフォローしてあげればいいよ」
――― ちょーどうでもいい
それらしい事を言いながら、僕は火を止めて器にスープを注ぎ始める。
なんだかんだ言って。
面倒を見るのが好きな征士と、見られるのが好きな当麻なんだから。
上手くいくだろう事は分かってる。
少し暗さの和らいだ征士に。
駄目押しで微笑みかけて、大丈夫だと念を押し。
ぱたぱたと音のする階段に注意を向ける。
――― もし、当麻なら。今のをネタにからかってもいいかな?
アホな惚気話を聞かされたんだから、そのぐらいはいいよね。
「おはぁぁよ〜〜〜」
寝惚けながらに起きてきた当麻に、僕はにっこりと笑顔で応えた。
「おはよう、当麻」
END
普通では見れない場所にできる痣を知ってるww関係萌えでしたww
基ネタ(?)を下さった、とららさまに捧ぐ(笑)
色々ありがとうございました〜〜〜^^
2013.01.09 UP
by kazemiya kaori