■ 秋の空に君を想う
青空が高くなったから、たまらなく逢いたくなる---当麻
東北・仙台の秋の訪れは早い。
日差しも和らぎ、涼やかな風が心地いい季節になってきた。
本来なら夏の喧騒からゆっくりと落ち着き始める季節なのに、優しい風と美しい青空に胸が痛くなる。
原因は、風や空から連想してしまう恋しい人が、触れられる距離にいない事。
直線でほぼ600キロメートル。なんともし難い現実。
夏に柳生邸で皆と一緒に過ごしたばかりなのに、もう顔を見たい、抱きしめたいと思ってしまう。
その時は、この空よりも青い髪と瞳が自分の腕の中にあった。
久しぶり会った夜、二人で部屋に戻るとドアを閉めてすぐ、たまらず抱きしめた。
「早く触れたかった」
昼間は集った仲間と過ごす。
それぞれの近況やこれから1週間の生活の取り決め、騒がしい夕食---どれも楽しかった。
けれど、それよりも何よりも、征士は彼の人に触れたかった。抱き締めたかった。
前回会ったのは自分の誕生日だから、実に2ヶ月ぶり。
毎日でも逢い、触れていたいと思う征士にとっては、十分に長かった。
「がっついてんなよ」
笑って抵抗しないので、当麻もそうだったとわかる。
だから遠慮なく、でも優しくキスをする。
だが、触れてしまえば、もう駄目だ。
優しくしたいと思っても、とたんに箍が外れたように激しく口づける。
その吐息さえ貪るように。
「はぁ…ぅ」
たまらず声を洩らし、自分の背中に手をまわしくる相手は、実に変わっている。
征士の存在を必要としながら、共に寝ることを受け入れながらも、恋ではないと言い張る。
何がその判断基準なのか征士にはわからない。
当麻への特別な想いが、本来同性に向けるべきではない欲を自覚した時に恋愛感情だとしたのに。
―――天才の考える事は、わからん。
征士が望むなら、セックスする事は問題ないようなのだ…。
頑固なのか、鈍いのか、臆病なのか、面倒くさいのか…モラルもない…。
征士のお堅い考え方では、特別で特定の相手のみとの間であるべき事。
確かに当麻にとっても特別であると本人も言っているが、恋愛だと認めない。
無理強いしても、頭でっかちの当麻は頑なになるだけだ。
―――いずれ、素直に認められる時がくるだろうが・・・。
そこまで考えて、征士は当麻への思考を行動へ移し、集中することにした。
独占できる今からの時間は、とても貴重だから。
身体と心はつながっている―――ならば、身体から気持ち良くしていくという攻め方もいいだろう?
舌を絡め味わう。当麻の甘い唾液と表情に酔う…。
久しぶりを堪能する。ずっと待っていた時間。
恋しい人の衣服を剥ぎ取り、胸の突起を唇で啄ばみ、舌で濡らす。
敏感な所をしつこく、責めると腰を揺らして応えてくる。
素直な反応につい嬉しくなり、夢中になる。
「とうま・・・」
何度も名を呼びながら快感と熱を与え、嬌声を引き出す。
「ああぁぁ・・・」
もっと刺激を欲している当麻自身に手を伸ばし、希望のままに擦りたててやる。
その快楽があるうちに、つながろうと指で解し、脚を抱え上げる。
まだ数える程しか征士を受け入れていない体は、苦しそうに受け入れた。
その時の、濡れた瞳とうす赤く染まった肌が綺麗で・・・。
―――まだ1ヶ月もたっていないのに…重症だな
時間も距離も思うにままならない高校生である我が身が、じれったくて仕方ない。
いっそ会いに行くという事も考えたが、生憎と今日はまだ木曜日で学校がある。
しかしも週末は剣道の試合だ。
サボるのは性格からして無理がある。
良い天気でさえ、恨めしくなってしまう。
「はぁ・・・」
「朝から溜め息なんて、珍しい」
駅までの道すがら、後ろから声をかけてきた妹・早月が隣に並ぶ。
かなりスローペースで歩いてしまっていたらしい。
―――ゆっくり想う事もできん
征士は頭を切り換えて歩き始める。
頭の中は、今後当麻と共にあるためにどうすべきかのみ。
今日帰ったら、電話をしてみよう。来月の誕生日には大阪に行くと。
その時、自分の想いと計画を話したい…。
―――当麻がなんと言うかが楽しみだ。
空を見上げて、『待っていろ』と呟いた。
END
朝から妄想の高校生征士さん。
2011.09.09 UP
by kazemiya kaori