ご褒美
「当麻 頼みがあるのだ……」
珍しく 頼まれごとをした。
何時も 自分の事は一人で処理するタイプの人間で。
頼る事も 甘える事も 苦手なヤツが。
困った様子で、静かに話しだした。
その内容は、確かに俺の得意分野で早く処理できるだろう。
あらたまって頼む様な事でもないのに。
そんな関係でもないのに。
その律儀さが、可愛いもんだ。
----------- ご褒美 -----------
「な、な、な、な、なぜだ?????」
疑問符が見えたなら、きっと征士の顔から頭からたくさん出ている。
驚きで見開らかれた紫の光彩は、いつもより大きくて綺麗だ。
「だって、お前、俺に頼みごとしたよな」
「ああ、快く引き受けてくれたではないか。それとこれは関係ないように思うのだが?」
『これ』とは、アレです。つまり、えっち。
眠ろうとした征士の真上に乗っかって。
半分布団に隠れた腕を抑えてから、顔を近づけて。
唇と唇を掠らせながら、話を続ける。
「関係あるんだって」
どれだけ、必要で大切なことか。
征士を説き伏せないといけない(笑)
実は、一回だけ。
ド真面目に告白した後に、征士の内側の体温を知った。
すっげぇ熱くて、蕩けてて、気持ち良かった。
――のは、俺だけで。征士にとったら、非常に痛かったらしい。
その翌日、目が覚めているのに起き上がれないでいるヤツを初めてみた。
静かな怒気をため込んだ貌で、二度としないと言われた。
更に。予想外に声が響いてしまった行為を振り返り、共同生活している連中にバレルのが嫌だ、とも言われた。
受け入れる側をさせている引け目と。
嫌われたくないって、理由で。
しばらくは大人しくしていたけど。
機会は、もちろん、虎視眈々と狙っていた訳。
想いは通じてんだから、無理矢理ってのは、実に格好が悪いし。
抵抗されれば、痛い思いをさせる確率は高い…。
今度しくじったら、3回目は永遠にないかもしれない。
それだけは、避けたいと切実に、願っている。
だから、ちゃんと納得するように、それらしく説明を……。
「お前の頼みなんだから、完璧にやり遂げたいんだ」
「……」
「そりゃ精一杯やるけど、モチベーションが高い方がミスも少ないし。
結果として、早く終わる。
で、今の俺のモチベーションを最高にするのは、征士ともう一回…ってことなんだ」
「つまり、報酬のようなものなのか」
「そう!しかも、ご褒美ってのは、終わってからって約束よりも、事前の方がより効果的なんだってさ」
ハーバード大学の研究結果なんだぜ?
そう口にしながら、当然と微笑んで見せた。
あれだけ丁寧に頼みこんできた事だから『そのようなことならば、もう頼まん』とは言えないだろう。
それを承知でつけ込んだのは悪いかもしれないけど。
俺にだって、事情がある。
青い欲が渦巻いているもんで、我慢にも限度だという、切実な事情。
「明日から、全力で頑張るから。今日は、痛くないように頑張るから」
って、念押しすると。
抑えつけていた征士の腕から、力が抜けて。
睨んでいた視線が外されて、下瞼がうっすらと紅く染まる。
了承の合図。
だから。
「ああ、そう願いたいものだ」と憎まれ口をたたく唇に、堂々と押し付けた。
さっきまでの触れるか触れないかだけの、遠慮がちなキスじゃない。
始まりの告げる深い口づけ―――。
この一ヶ月間、いつもここ止まりだった。
今日は、その先を――最後まで味わえる。
END
似たよーなお話ばっかりだけど、好きなんだもん!
って、言っておきます(笑)
ひさびさにネタ帳をみたら、こんなんばっかりだったwww
相変わらずですが、よろしくお願いしますです!
今日で、サイト3周年☆
お陰様です^^
ありがとうございま―す!!!
2014.09.06
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