珍獣観察日記
僕の名前は、毛利伸。
最近一緒に生活を始めた友人が、あまりにも変わっているので観察を始めたんだけど。
とても面白いことが分かったので、これを書いている。
その人物は、羽柴当麻という。
他にも一緒に暮らす仲間はいるし、彼以外の三人もかなり個性的だ。
でも、単純で分かりやすい。
その点、羽柴当麻の場合は複雑で観察しがいがある。
そして何よりも、面白いのだ。―――面白い状況を作り出している。
本人は賢いつもりでいるし、事実として頭の回転は速い。
なのに、自分では分かっていない部分があるのだ。
それを、告げたら、どんな顔をするのだろう…。
考えると、楽しみでならない。
今。
ソファに寝そべっている当麻は、征士に声をかけられた。
征士は、だらしがないことは嫌いだという潔癖な性格だから、起きろとか何とかお小言を言われ。
面倒くさそうに、受け答えをしている。
でもね。
当麻は、他の人間だったら、返事をしない時もあるし、視線なんて合わさないんだ。
深く思考の海に潜り、結論を探している時は、誰に対してもろくな反応を返さない。
どんなに失礼でもね。
何時からだろう…征士にだけは返事をするようになったのは。
闘いの最中だった、かな。
混乱して行く状況で、ハッキリとは覚えていないんだけど。
後ね。
何やら色々と考え分かってしまうだろう当麻は不機嫌な事も多い。
そして、だれかれ構わずに、キツイ言い方をする。
もちろん、征士にも。
だから、誰も、前述の件なんて、気づかないんだ。
僕だって、気づかなかった。
気づいたのは、征士には、殊更にヒドイ言葉を投げる時があったから。
顔色をあまり変えない征士は、静かに聞いていたけれど。
棘だった態度では、同室の征士が大変だろう。
逆になにか原因があるのか。
色々と考えた結果。
ヤツあたりに近いそれは、甘えなんじゃないかって結論に達した。
声を聞くと、つい反応してしまう相手。
自分の苛立ちを分かって欲しくて、甘えてしまう相手。
ねぇ、当麻。
それって、特別な相手ってことだよ。
征士に、特別な感情を持っているってことだよ。
気づいていないだろうから――教えてあげるよ(笑)
征士がふたことみこと言葉を交わし、立ち去っていく。
僕は、再び自分の脳内に入り込もうとしている当麻に近づき。
「ちょっと、いいかな」と声をかける。
きっと、視線をこちらに向けない当麻には、僕の表情は分からないだろう。
「なんだ」と、声だけで対応する君に。
満面の笑みを浮かべて、言ってやるんだ。
「征士に告白した方がいいと思うよ」
「は?」
予想したとおりに、当てはずれな発言の主には、眉間のしわと冷たい視線を投げてくる。
でも、気にしないよ。
今はそんな風に反応しても、後できっと考え始める。
そして。
やっと、僕の言った意味を、本当に実感するんだろうから。
機嫌を損ねたことなんて、無視して。
「じゃぁ、ね」と立ち去る。
仲間内で、男同士の恋のキューピッド役をやるなんて、思ってもいなかったけど。
にっぶにぶの二人には、必要な役回りだと分かってる。
手助け料は、これからの当麻と征士の珍騒動を見せてもらえることで、チャラにしておいてあげるよ。
だから。
幸せになりよな。
そう、願うんだよ。
END
恋する二人は、きっと珍獣に見える筈(笑)
誕生日とは程遠いのですが、書きたいので書いちゃったw
お誕生日おめでとー 征士さん^^ノ
2015.06.09の38時に更新w
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