アツクナリタイ 




人間は慣れる生き物だ、と知っている。
似たような刺激を与えられ続けられると、感覚が鈍化してくるのだそうだ。
それは良い場合もあれば、悪い場合もある。

今の私にとっては―――悪い方なのだろう。










当麻から想いを告げられ。
戸惑いながらも。
特別な感情を共有し始めたのが、ちょうど三ヶ月前。

初めて。
唇を重ねたのは、好奇心だった。
舌と舌が触れた時、高鳴りに罪悪感はかき消された。

裸体を晒すと。
じろじろと視られた羞恥に、思考は停止し。
直接、肌を重ねた重みと熱さに、瞠目した。

有り得ない姿勢になり。
全てを受け入れ、慣れぬ苦痛に涙し。
身体の奥から這い上がろうとする快感に、焦り、引き摺られた。



初めて、の連続で。
己の心も身体も顧みる余裕もなく。
当麻のいいなり、ではないが。
ただただ、ヤツの行動に合わせるのが精一杯だった。

当麻からの想いと身体とを感じ。
当麻への気持ちと自分の身体の変化を認識して。
受け入れることしか出来ていなかった。




それなのに、今。

優しい指先が、身体中に触れて。
あちこちに、淡い快楽の種を植えているのに。
緩やかな快感の高まりには、慣れてしまったのか。
理性の発する声を、封じ込めることは出来ない。
生まれた余裕の隙から微かに見えてしまう、己の負の感情。


 同性に恋した自分
 乞われて受け入れた自分
 常識と公序良俗から逸脱した自分
 本心と良心の葛藤
 快楽と引き換えにした矜持
 己を苛む(さいなむ)罪悪感




「せーじ、力抜いてて」
「………ん」


柔らかく受け入れやすくなった私の奥に。
ゆっくりと当麻が潜り込んできても。
暗い影は、消えないのだ。
目隠しした指の隙間から、見えるように。
少しだが、確実にその存在を主張する。


忌々しい――そんな感情など、今は見たくない。



だから。



「当麻」


様子を伺うように、ゆるりゆるりとする相手に。
声をかけて。


「気遣いはいらん。もっと……」


もっと快楽を望んでいる、と舌を舐めあげるキスで伝え。
その肩先にすがりつき、促すように指先に力を込め。
堪えきれないと訴えるように、自ら腰を揺らめかし――強請る。


「っ…っん」
「いいね。せーじ、エロくていいよ」


私の真意など知らないヤツが。
嬉しそうに垂れた目尻を更に下げて、笑う。


「煩い……早くし…ろ」
「言われなくても」


途端に、激しくなる動きに。
脳髄が痺れて、息が騰がる。

身体中に点在していた淡い快感のさざ波が。
秩序も無く大きくうねる高波となり。
私の理性を、呑み込んでいく。


「……っぁ……アァァ……っは……」


煽るために揚げていた筈の声が。
意図とは関係なしに。
喉から洩れて、止まらなくなる…。


「これぐらい?もっと?こう?」


歓喜なのか。鼓舞なのか。
自問に近い当麻の台詞が。
遠くで聞こえる。


「…あぁぁぁ………っぁあ……」


答える必要はない――答えを知らしめるのは、自分の嬌声。



相性がいいのか、ヤツが上手いのか。
もっと感じたいと、全てが欲しくなるように追い上げられたり。
これ以上は無理だと、全てを手離したくなったり。
甘くとろりとした感覚と、ぴりっとなると刺激に翻弄されながら。
溶けるように一つになっていく…。
深く内壁を突き上げられる熱い快感と。
それを与え続ける恋人への想いで、いっぱいになり。
余計なことは、見えなくなり…考えられなる――望んだままに。



「と…ま……っぁ………とう…ま……」



後は。

望みを叶えてくれた相手の名前を。

ひたすらに、呼び続けるだけだ。



意識を失うまで。




END





またヤッテいるだけのお話w
本当にこんなんが大好きです☆大好きなんです☆(通常営業w



2014.05.22




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