LovePsychic





夢の中だと、分かっている。


今、私は。
当麻の白く柔らかい脇腹に唇を寄せて、紅い跡を吸いつける。


「ぅっ」っと吐息があがり、彼は身体をびくつかせる。
敏感な場所を探りながら、全身をくまなく辿る楽しい道程。
既に歩んだ道には、わき腹と同じ紅い花が咲いている。
首筋にも鎖骨にも、胸部にも。
きっと明日は着る服に困るぐらいに花がその存在を主張している。
開花するたびに、甘く芳しい息が漏れてくるのだから。
もっと咲かせたいと思ってしまう。


夢の中だと分かっていても、嬉しいものは嬉しい。
現実では――告白のタイミングさえつかめないのだから。
願望欲望欲情そのままに、堪能させてもらうのだ。



脇腹から腰骨の際を、先行する指が撫でその後を唇が追う。
「ぁ…」
今までは違う、戸惑いを含んだ声に。
背中が痺れるような興奮を覚える。
もっと丁寧に焦らしてやれば。
どんな様を見せてくれるのだろうか。

そして、今まで触れたことのない彼自身にも指を絡めて。
やわやわと上下に動かして、反応をうかがう。
「ああっ!ちょっ」
良さそうだ。
ならば、引ける腰をもう片方の手で押さえて。
もっと、当麻が喜ぶように―――唇で包んだ。
「あああああ」
明らかに違う声。
やはり、男のシンボルへの刺激は格別なのか。
胸先を嬲った時よりも、あからさまな反応。
嬉しくなって。硬く硬くなるまで、舐めまくる。
そのまま腰の奥側にも指を忍ばせて。



今宵こそ、念願の―――。
そう思っていたのに。



「いい加減にしろっっっ!!!」



突然。
そう怒鳴られて、夢は終わった。



いくら夢だとはいえ、あんまりな幕切れ。
はぁぁぁぁとため息が出る。






ベッドサイドの時計を見れば、深夜2時を過ぎたあたり。

そして、夢に見るまで恋しい人が、時計の向うに見えるベッドで眠っている。

布団にくるまって背を向けているので顔は見えないが、特徴である青い髪が月光で確認できる。
最近、ベッドで休んでいないようなので心配していたのだが、今日はこのまま安心して眠れる。
夢中になると書斎から帰ってこない本の虫である彼は、眠る時間になっても部屋に戻ってこない。
身体を壊すのではないかとナスティ達にも相談していたのだ。


それにしても…。
先程の夢の話に戻るのだか、いつも最後までいけない。
確かに私自身がそういった経験がないので、その所為だと思えば納得もするのだが。
なんというか、夢なのだからいいではないかと思うのだ。
最後の怒鳴った当麻は、現実の彼らしくてそれはそれで、可愛いのだが。
それは置いておいて。


非常に、残念だった。
もう少しで念願の…。
なんで夢の中なのに、無理なのか。


もう一度眠りについたが、それはふて寝に近かった。
しかも、続きも見られなかった―――。



*************



天空としての戦いが終わってからも、俺は大阪には戻らいないでいる。

小田原で平和な共同生活をしているのは、凄惨な記憶を薄めるためというよりは。
仲間と過ごすことが、単純に楽しいからだった。
個性的なメンバーと高校生活をおくるというのは地元では望めない。
もちろん、自分を含め皆が困った時―戦っている間の認識の世間との差や学力の差など―の対策にも、相談できるという特典もいいことだと思っている。


普通の日常が戻ってきたはずだった。




ところが。
俺だけ。
平穏ではなくなった、のだ。



超能力:精神感応力(テレパシー)に目覚めてしまった。

それも。
かなり特殊で、特定の相手の思考だけが伝わってくる。
その相手と言うのは――伊達征士。
同じ部屋で寝起きする、いうなれば一番顔を合せている時間が長い。
だから、困る。

更には、ヤツが俺に惚れちゃっているっていうのがまるわかりで。
非常に非常に困っている!!



だいたい超能力ならば、誰に対しても使えるはずだ。
そう思って伸や遼の考えていることを知ろうとしたけれど、全く分からなかった。
高校でも試してみたが、クラスメイトの思考は誰一人して読み取れなかった。

ということは。
征士がエスパーなんじゃないかとの考えに至った。
つまり、自分の考えを伝えることが出来る、という類の能力。
精神伝応力とでも言う様な…。

でも。
征士なら、口に出すと思う。
実際、何回かヤツは俺に告白しようとしていた。(分かったから、その前に逃げたけど)
つまり、征士にとっては意味のない能力だろう。


では、これは何なのか。
更に考えたのは―――。
征士は、自分の想いを伝えるだけでなく、相手(つまり俺)に対して共感させられるというものだ。


だって。

実は。

それを知った時。

なんというか。

嫌じゃなかったから、だ。


普通、同性から想われたら、気持ち悪いとか思うだろう?
それが――正直、なかった。



心底、惚れられて。
まっすぐな。
あったかい、熱い気持ちを注がれて。
なんというか――嬉しく思ってしまって。



自分の精神感応力なのか、征士の精神共感力なのか。
両方なのか。他の可能性があるのか。

もうちょっと悩むところだけど。
いや、悩みたいんだけど。

実際問題として、征士の強すぎる感情が凄くて対応に困ってて。
もう、それどころじゃない。



部屋に戻ると。
ほぼ毎夜。
妄想全開で、夢の中で征士と俺といちゃいちゃしてるっていう地獄。
(時々、起きてる時も妄想してるけど、まだマシ。
(きっと、夢の中だと、タガが外れるんだろう…。


初めの内は可愛いもんだった。
夕暮れの校舎の裏や、自室でくつろいでいる時とかに、征士が告白して『俺も…征士のこと』とか言って頬を赤らめているだけだった。
頬を赤らめている自分を見せられるってのは、かなり恥ずかしい。
恥ずかしいが、まだ、耐えられる範囲。
けど。
日数を重ねると。
遠慮しないヤツは、抱きしめてきたりキスしたり服脱がしたり、やりたい方で。
その度に、俺は喜んでたり、焦ってたり、気持ち良くなったりして。
初々しい反応をかえしてる自分を、見せつけられる訳で…。
悲鳴をあげたいほどに、本当にどうにかして止めて欲しい。
そう切実に思う。
(けど、もちろんそんなことは言える訳もない


いたたまれなくて、しばらく部屋に帰れないで、書斎の安楽椅子で寝てた。
そしたら、ナスティから部屋でちゃんと寝なさいって言われて。
帰らない理由も説明できないから。
しぶしぶと、久しぶりに自分のベッドで休もうと思ったら。
夢の中に。
愛撫で散々啼かされて「いよいよ受け入れます」みたいな俺が、いた訳で―――。


つい「いい加減にしろっっっ!!!」って、叫んじまった。


そうしたら征士にも届いちまって。
征士が夢から覚めたみたいだったから、慌てて寝たフリした。



よくよく考えれば。
俺たち両想いだし。
めっちゃ愛されてて、嬉しくないはずがなくて。
告白から逃げなければ――すぐにハッピーラブライフになるわけだ。


けど。
けど。
けど、な。


もう少しだけ。
焦らしてやる。
悩ましてやる。


それは身の置き場の無いほどに恥ずかしい思いをさせられた俺の意趣返し。
自分の想いを、隠す気はないけど。
しばらくの間は、征士に片想いに悶々としてもらう。

それぐらいは許されるだろう。


そして。
心底残念がって、落ち込んでいる征士の気持ちを読み取り。
ざまあみろって、ちょっと意地悪く思ってから。
俺は、安眠の世界へと降りていったのだった。



END




ハッピーバースディ!!
当麻さん!!!

征士さんの妄想に、先に根をあげるは当麻さんだと思います(笑

2016.10.10   kazemiya kaori




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