イレナイ男






『絶倫』


この言葉は、コイツの為にある言葉だと思う。
コイツとは―――今ベッドの隣に眠っている男の事。
正確には、俺の事を抱きしめて離さず、自分だけぐうすか眠っていやがる伊達征士の事だ。


十代半ばにひょんな事件で知り合い、仲間となり。
何故か、友人以上の身体の関係が始まって、そのまま恋人に昇格。
順番や認識は、俺と征士の間では異なるらしく。
この話を始めると言い合いになって、なんでか俺が責められるんだけど…。
まぁ。
もう10年以上も一緒に居るんだから、些細なことは置いておいて。




現在の問題は。
その絶倫認定独断実行者が、最近大人しいということ。


つい先月までは、三日と開けずにシテいた。


『身体に悪いだろうが!』と負担のかかる側の俺が抗議しても。
『癒しの力があるから、大丈夫であろう』とかなんとか、もう無理矢理で。
今はもうそんな力ないだろうとの正当な理由も。
『お前のは、癒しじゃなくてイヤらしいだろ』とのちゃかしも。
一切無視してって感じだったのだ。




それが。急にシなくなった。

愛情がなくなった訳でもないらしいって、思うのは。
今も、苦しいぐらいに抱きつかれてるから。


でもな、自分は眠れても、俺が寝にくいっていうんだよ!




しかも俺にだって、それなりの欲求はある訳で。
相手しないなら、先に寝るてくれ。
一人で処理するから!


なのに、無理矢理にベッドに引きづり込まれ。
『おやすみ』と言いながら触れるだけのキスをされ。
後は、俺を抱き枕がわりにして、自分だけ夢の世界って―――。



俺は怒ってもいいだろう!


「おい!」


眠っている筈なのに馬鹿力で離れようとしない馬鹿を、起こそうと叫ぶ。


「おい!征士ってば」


「ん?なんだ?怖い夢でも見たのか?」


いや、現実の方がホラーだよ。


「お前さ、なんで最近シないんだ?」


むか〜しむかし。
そんな時期があった。
まだ、お付き合いという形に至ってなくて、体だけの関係だった時に。
感じさせ過ぎたら困ると言う訳の分からない理由で、征士が手を出さなくなった事が。


今回の理由は、何だ?
普段はとても常識的なのに。
俺が絡むと征士の思考回路は明後日の方向に飛躍して。
更に、一回転半するから着地点が分からない―――つまり奇天烈な訳だ。


だから、訊くしかない。


「なんでだ?」


「離れたくないのだ……」


眠そうな声が、返って来て。
内容も眠ってんのかって感じだ。


「はぁ? 離れてないだろ?一緒に暮らしてるし…」


「違う。セックスすると、お前の中から離れなくてはならないだろう。」


当たり前だ。


「その瞬間がやるせない。ずっと繋がっていたっ イタイ! 当麻!!」


途中で殴ってやった。


何だ?挿れなければ、離れないで済むって。
そんな、阿保な理由で……………。


「痛いと言っている。そんなに蹴るな」


蹴ってやる。蹴ってやる。蹴ってやる。


ホンの少しだけど、ホンの少しだけどな。
俺に興味が無くなったのかとか、浮気してんのかとか、深刻なEDとか、変な病気とか。
ホンの少しだけど、心配しちまった俺の気持ちをどうしてくれんだ!


「よせ、ベッドから落ち…」


ドスン と重たい音がした。


落としてやった。


前にも言ったけどな。
キスだけじゃ、物足りないってんだよ!
俺にだって、欲求はあるっちゅうねん!!!



床で戸惑う自分勝手な男を、ちろりと見下ろして。

にやりと笑ってやった。



んで、そのまま毛布を引きかぶってベッドに潜った。

色んな意味で疲れたんで、今日はもう寝る!





理由は分かったんだ。

明日から、仕返ししてやる。

そう、明日から。

シたくなるように、お誘いしてやるよ。

あの手この手で。


―――ああ、明日が楽しみだ


どんな手にしようか考えながら。

久しぶりに、心地よい眠りへと誘われる………。



END






『○○な男』シリーズのお話 ^^

本も完売したし、いつかちゃんとサイトでもまとめたい。
(その前にサイト復旧しないとww)





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