初めてのキスの呪縛を解こう 


密着している身体を離す瞬間の物寂しさは、何度経験しても慣れない。

征士は離した身体の隙間を埋めるように、腕の中でくったりしている当麻のつむじに何度もキスをおくる。


「征士はいなくならないよな」

もう眠っているかと思っていた愛しい人が、突然に声を発した。
しかも珍しくも抱きついてくる。

「どうした?いなくなる予定はないが…」

驚きを明るい笑いに包み、不安を口にした恋人を強く抱きしめ返した。
いつもなら苦しいと文句でも出そうなのに、言葉は聞こえず、胸のあたりが濡れているような気がした。
汗ではない、押し付けられている当麻の瞳が濡れているのだろう…。

「当麻」

なぜ泣いているのか。
ちょっと前まで、熱烈に、当麻が止めろと言うぐらいに愛し合っていたというのに。
目を見て話したがったが、当麻はしがみついて顔を上げようとはしない。
その代わりに…。

「小さい頃に…お袋が仕事でいなくなる前に……必ず頭にキスされてた。 
 『当麻君、行ってくるわね、いい子で待っていてね』って……。
 子どもだから…待ってるのしんどかったな―――――って、ふと思い出してさ」

 最初は掠れていた声が、話しをするうちにいつもの当麻の調子に戻って来たのを感じて、征士の少しだけ安堵する。

「そうか…寂しかったのだな」

「まぁ、そうだったんだろうな」

子どもの頃は上手く言葉にできない感情をもやもやと持ち続け、そのままため込んでしまうことがある。
人は気が緩むと、そうした昔のことをふと思い出すのだ。
もう手放しても大丈夫だと思える時に、無自覚にも掘り起こされる。

その貴重なタイミングに居合わせられたことを、征士は感謝した。

「私は、当麻が嫌がってもずっと傍にいるから、心配せずとも大丈夫だ」

 嫌がってもかよ。と笑う当麻にの青い髪に、征士は誓いのキスを優しく長く、愛をこめておくったのだった。                 


END




201805のイベントでの無配したお話。
この時のノベルティがくるくるkisskissコースターをいうもので、
浮かれてkissにまつわるSSSを書いちゃったのでした(笑

ペーパーのサイズが小さくて(A6)だったので、文が短い…。
なんとなくでも、伝わると嬉しいです^^


2018.06.08 征士さんお誕生日おめでとうございます!(一日フライングw)

kazemiya kaori



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