注文の多いファーストキス 



当麻は視線を感じた。

自分は目を閉じているというのに、じーっっと見つめてくる暑苦しい視線を。




もともと真っ直ぐに、時には睨んでいるのかと錯覚するほどに人を見るヤツなのだが、今はちょっと気恥ずかしい。
初めてキスしますという時なのだから、ほんとに勘弁してほしい。

十日前からお付き合いをはじめた相手なので、キスするのはいいといえばいいのだが…。
当麻は羞恥に耐えられなくなって目をぱっちりと開けた。
そして、近づいてくる征士の唇を右手で押し戻す。

「なぁ、お前、目ぐらい閉じろよ」

「なぜだ。見ていたいのだからいいではないか。それに見ていなくて失敗したら…いや失敗したくないのだ」

征士も初めてらしく可愛いことを言っているが、キスの邪魔をした右手を引っ張って抱き寄せるあたり、なかなかのものだ。

「俺からするから。お前が目を閉じてろよ」

無防備な顔を晒したまま待ってるのが、当麻は嫌だった。
というか、するならさっさとすればいいのに、時間がかかり過ぎだ。

「いや、それは駄目だ。私からしたい」

その希望をきいてやったのが間違えだったと分かったが、あとの祭り。
もう征士は譲らないだろう、頑固者だから。当麻はあきらめた声で。

「じゃぁ一緒に、同時に、な。待ってるのはちょっと」

「それだときっと歯をぶつけるぞ」

「中途半端に勉強すんなよ」


確かに、初心者若葉マークのキスでよく書かれている注意事項だ。
どうする気なんだと当麻が征士を見ると、する気満々で舌なめずりしている。

「後な、お前さ、ファーストキスで舌入れるなよ」

「注文が多いな」

「否定しないのかよ!」

うるさい、というが早いか征士が勢いよく当麻の唇をキスで塞いだ。


もちろん。
歯はぶつかったし、その後で舌も入ってきた。   





END




201805のイベントでの無配したショートコント(?)。
この時のノベルティがくるくるkisskissコースターをいうもので、
浮かれてkissにまつわるSSSを書いちゃったのでした(笑

うん。初めてのちゅうはどんな感じでも美味しい!!!


2018.06.08 征士さんお誕生日おめでとうございます!(一日フライングw)

kazemiya kaori



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